平成19年1月、平成20年2月にTOS会員都市を対象に行ったアンケート調査を基に、道路整備と一体となったまちづくり(ソフト施策)の取り組みについて検討を行いました。(平成18年度、19年度)

(1)検討対象事業
  TOS会員都市(26都市)における「道路整備と一体となったまちづくり(ソフト施策)の取り組み事例」として7都市8事例を抽出しました。
事業名 都市名 まちづくり(ソフト施策)の取り組み
交通機関と一体となった都心のまちづくり 札幌 公共交通のサービス向上
荷さばき対策
路上駐車対策
道路機能の分類
道路空間の活用
JR手稲駅周辺整備事業 札幌 自由道路に併設した多目的空間の整備
街路事業に合わせたまちなみデザイン協定による街づくり 山形 都市計画道路諏訪町七日町線沿線街づくり委員会
いわき駅周辺再生拠点整備事業 いわき 泥空間を活用した事業(まちなか青空市)
日本大通りオープンカフェ 横浜 公道上でのオープンカフェの実施
御池通シンボルロード整備事業 京都 御池沿道のまちづくり
種から育てる地域の花づくり 大阪 住民主体の花のある道づくり
横川駅前広場整備事業 広島 レトロバスの製作


(2)整理の視点
  これらの事例におけるまちづくり(ソフト施策)の取り組みについて、つぎのような着眼点から整理しました。

 ア)活動の場・・・取り組み活動の場を整理(組織や仕組み)
 イ)目的・テーマ・・・取り組みの目的やテーマを整理
 ウ)取り組み内容・・・具体的な内容を整理
 エ)整備の段階・・・関連する街路の整備の段階を整理



(3)整理結果のまとめ
  ○上手くいった事例の共通点
  @地域の抱える課題・ニーズへの対応
    ・行政と住民の共通した認識
  A住民のやる気・その気
    ・一過性の取り組みから、継続した取り組みへ
  B行政と住民の適切な役割分担と協働
    ・住民主体で利活用しやすいように行政が街路を整備
これらの共通点、及び各都市の事例を参考にして、まちづくりを意識した街路の整備に取り組んで行きます。



交通機関と一体となった都心のまちづくり(札幌市)
  ○公共交通のサービス向上
都心の魅力向上と活性化を目的に、利便性の高い公共交通のひとつの手法として、平成16年9月に札幌都心部の回遊性を高める無料都心循環バスを運行する社会実験を札幌市が主体となって実施し、実現化に向けた課題の整理を行いました。

  ○荷さばき対策
札幌都心部では、荷さばき作業の約9割が路上で行われ、その台数は1日に約4千台にもなることから、交通混雑の一因と考えられました。そこで、路上で行われている荷さばきを路外で行う路外荷さばき施設の設置や路上荷さばきのルール化について、荷さばき事業者と共に社会実験を実施しました。

  ○路上駐車対策
平成18年6月に改正道路交通法が施行となり、民間の駐車監視員による放置駐車確認を導入して違法駐車の取り締まりが強化されることから、都心部の駐車場マップを配布し、違法駐車防止を呼びかけました。

  ○道路機能の分類
創成川通では、これまで二つに分かれていたアンダーパスを一つに接続して通過交通を地下に流すと共に、地上部の8車線(片側4車線)を4車線(片側2車線)にすることで生まれた空間を親水緑地空間として整備を予定しています。 札幌駅前通では、地下歩行空間の整備に合わせて、地上部の6車線ある道路を4車線にし、残りの空間を歩道や停車スペースにする道路空間の再配分を実施中です。

  ○道路空間の活用
札幌都心部のにぎわいと安全・安心で魅力的な道路空間の創出を目的として、札幌シャワー通りやすすきの地区において、札幌市と地元商店街、地元事業者等が連携して道路空間を活用したにぎわい創出や交通対策を実施しました。


JR手稲駅周辺整備事業(札幌市)
  ○自由通路に併設した多目的空間の整備
JR線で分断されている南北の市街地について、駅前広場の拡張やJR北海道が行う駅舎の橋上化に併せて南北をつなぐ自由通路を整備し、住民の交流促進を図るための多目的広場として活用しました。
なお、計画策定については、地域に根ざしたまち づくりの実現を目指し、住民が参加しやすい場や機会を設ける必要があると判断し、住民や使用者の立場からの意見を把握するべくワークショップ手法を取り入れています。


街路事業に合わせたまちなみデザイン協定による街づくり(山形市)
  ○都市計画道路諏訪町七日町線沿線街づくり委員会
平成14年1月の都市計画道路諏訪町七日町線の事業認可に合わせ、地元町内会が中心となり、沿線の建替えに向けたデザインと継続的な街づくり運動について協議を重ね、市景観条例に基づき協定を締結し、現在も活動を行っています。


いわき駅周辺再生拠点整備事業(いわき市)
  ○まちなか青空市
いわき駅前地区再開発事業及びいわき駅周辺再生拠点整備事業拠点整備事業等を契機に、地域の商業者、商工会議所、再開発関係者及び行政が一体となり「いわき駅前賑わい創出協議会」を設立し、様々な市民の方々の参加協力を得て、街の賑わい再生に向けた取り組みを展開しています。


日本大通りオープンカフェ(横浜市)
  ○公道上でのオープンカフェの実施
歴史的な風格ある景観をもつ「日本大通り」において、その広幅員歩道を生かした賑わい景観の創出を目的とし、地元有志による委員会が公道上でオープンカフェを実施しています。平成17年度は国社会実験として実施、平成18年度からは本格実施(4月〜11月)に移行し、継続中です。


御池通シンボルロード整備事業(京都市)
  ○御池沿道のまちづくり
街路整備を契機として、御池通沿道のまちづくりの気運が高まり、平成14年10月に、にぎわい創出と景観形成に向けた取組を検討するため、沿道住民、沿道事業者、経済界、学識経験者及び行政で構成する「御池沿道関係者協議」が設置され、平成16年8月に「最終とりまとめ」が行われています。
また、18年度からは沿道住民及び沿道事業者で構成する「OIKE Festa 実行委員会」が発足され、御池通沿道においてオープンカフェ等の実施を中心としたイベント「OIKE Festa」が開催されています。


種から育てる地域の花づくり(大阪市)
  ○住民主体の花のある道づくり
都市計画道路の整備を行い、広幅員の道路ができることにより、これまであった地域コミュニティが分断されることが大きな課題となっていました。この解消策として、加島天下茶屋線の設計段階から地域住民と話し合い、歩道部分に新設される植樹スペースに花苗を植え、日常の世話をしてもらうことにより、地域コミュニティの分断の解消を図りました。


横川駅前広場整備事業(広島市)
  ○レトロバスの製作
駅前広場の整備を契機として、横川地区の市民グループが「レトロバス復元の会」を設立し、日本で最初に走った国産乗り合いバスを復元したレトロバスを製作しました。